モノづくり資本主義宣言 ー モノづくりが明日の日本を創る ー
松山隆幸のコラム
コラム詳細
内発的なエネルギーが企業を元気にする ~「ひらめき」「ねばり」「持続力」を大切にするヒト中心の経営 ~

「開化は人間活力の発現の経路である。...開化の推移はどうしても内発的でなければ嘘だと申し上げたい。」

この言葉は、明治44年(1911年)「現代日本の開化」と題して行われた和歌山での講演の中で夏目漱石が語った言葉です。明治維新以降の日本の開化は強国の前に言われるままに急成長してきた外発的な発展であり、「上滑りの開化」だったとも語っています。明治時代にあって漱石の時代を見通す洞察力には驚かされますが、漱石の言う「上滑りの開化」は現代においても今なお日本の経済発展の表層を覆い尽くしているように私には思えます。

 

▼外発的に発展してきた日本

特に、バブル経済崩壊後の日本の経営を見てみますと、米国型の会計基準の導入にはじまり、CSRやSOX法など様々な"グローバルスタンダード"という名の米国製スタンダードを推されるまま議論もなく導入してきました。まさに、これこそが外発的なのです。その結果生み出したのは、カネ中心の経済であり、行過ぎた株主至上主義、そして人間の強欲にまかせた歪んだ経済だけで、日本の将来へ向けた真の価値ある文化を生み出したようにはとても思えません。加藤周一氏はその著書『日本文化における時間と空間』の中で、「過去を忘れ、失策を思いわずらわず、現在の大勢に従って急場をしのぐ伝統的文化があった」と述べる一方で、私たち日本人は先祖代々、縄文時代以前より多くの外国の異文化を積極的に取り入れは土着化させ、日本人の風土や価値観に合った形に変容し、新たな日本文化として継承してきた歴史があるといいます。

 

▼日本が誇るべき内発的なエネルギー

古くは漢字にはじまり、仏教などはその良い例でしょう。また、茶の湯や能などの文化芸術なども元々は中国などから伝わったもので、長い年月をかけ少しずつ日本人好みに合わせて洗練され、現代まで「型」や「作法」として伝承されています。また、モノづくりにおいても、建築だけでなく鋳造や鍍金の技術などは紀元前には大陸から伝わり、奈良の大仏や薬師寺の日光・月光菩薩像のあの優美な姿もその技術を活用して造られ、約1300年たった今でも日本のモノづくりを支える基盤技術としてしっかりと定着しています。

「今=ここ」に生きる日本人でありながら時間をかけ、独自の文化として定着するまで洗練させ熟成させる独特の「ひらめき」と「ねばり」、そして「持続力」。この力こそ私たち日本人が誇りとすべき"内発的"なエネルギーの本質なのかもしれません。

漱石は"内発的"を「自然と内に醗酵して醸された礼式」と説明しています。まさに、寒い冬をじっと耐え、耐えながらも少しずつ開花へのエネルギーを内部に溜め、春になると一気に蕾が破れ、花弁が外に向って花開く桜の花。その桜の開花のプロセスに、まさに内発的な発展の「型」を見て取ることができます。つまり、大自然の摂理から謙虚に学び私たち日本人に合った「型」や「作法」に時間をかけ作り変えていく力が今まさに求められているのでしょう。

 

▼独自の質で活躍する中小企業

日本には大勢には従わず独自の質を追求し、内発的な力を持って小さくとも特異な市場を創造し、地方から世界市場へ「超越」しようとしている中小企業も数多くあることを忘れてはいけません。そのような中小企業の中に、米国型の経営学では見落としてきたヒトを中心とした生きた「型」や「作法」があり、まだまだ私たちが学ぶべき大切なことがまだまだ数多く残されているように思います。「上滑り」のあとに見えてくる「内発」の本質が必ずやそこにあると私は思います。

[参考図書]

夏目漱石 『私の個人主義』 講談社学術文庫、1978年

加藤周一 『日本文化における時間と空間』 岩波書店、2007年

鶴見和子 『日本を開く』 岩波書店、1997

鶴見和子 『内発的発展とは何かー新しい学問に向けて』 藤原書店、2008


*この小論文は長岡商工会議所会報誌2009年1月号にも掲載されています。

   ダウンロードはこちらから>>> http://www.jasmi.asia/report/nagaoka-report0901.pdf


2009年03月24日
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