モノづくり資本主義宣言 ー モノづくりが明日の日本を創る ー
松山隆幸のコラム
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日本古来の伝統技-鋳造と鍍金-に学ぶ創造のちから =新潟県長岡の伝統企業を訪問して=

2008年9月12日から2日間にわたり、『日本古来の伝統技-鋳造と鍍金-に学ぶ創造のちから~伝統技術にみる美と創造力~』をテーマに、機械産業の集積地として有名な新潟県・長岡市にある2つの企業を視察させていただきました。


1つ目は、(株)小西鍍金(小西統雄社長)。創業1930年と、約80年もの歴史を持つ鍍金会社です。伝統産業ながら鍍金へのこだわり、技術開発については今もなおその努力を怠らず継続しています。その持続力の秘訣はどこにあるのかを探ってみました。そして、2つ目は、(株)品川鋳造(品川十英社長)。多品種少量生産の鋳物部品を木型から加工までの一貫生産を得意とする社員60名程の鋳造会社です。古くから継承され伝統ある技術の中からいかに創造力は生まれるのか。その技術がまぜ今長岡の地に根付いているのか。そんな問いを抱きながら、今回は小西鍍金さんと品川鋳造さんのモノづくりの現場を訪問させていただきました。


調べると、メッキも鋳造も紀元前から数千年も継承されてきたモノづくり技術。先日、国立博物館で開催された薬師寺展で実際に見た日光菩薩、月光菩薩の妖艶なまでの美しさも鋳造とメッキの技術が使われ、またあの奈良の大仏様も同様の技術で作られたと言われています。まさに、伝統の技術の中から生まれた創造の美といえるでしょう。


実際に訪問してみると、すべての製品が一品モノで決して失敗が許されない中、黙々と働く職人達。そこには、それぞれの役割を淡々とこなしていく姿しかありません。その動きはきびきびとして、眼差しは真剣そのもの。まさに、これがモノづくりの現場なのでしょう。そこには、お客様から持ち込まれたモノとそのモノに真摯に向き合う職人の姿しかありません。メッキ液や煮えたぎる鉄の熱さなど決して楽とはいえない労働環境の中、彼らはひたすらモノをつくり続ける。

おそらく職人達は、自身が作ったモノがお客様に渡ったあと、お客様から直接話を聞く機会はほとんどないのかもしれません。それでも、今ある目の前にある仕事を淡々とこなしていく。彼らはどこで仕事の喜びを感じるのか。そんな疑問も傍観者である私だから思うことで、結局職人達にとっては、お客様に満足していただくことだけを考え、ただただ日々新たな仕事に真剣に挑んでいくしかないのかもしれません。まさにそこにモノづくりにおける一期一会の世界がここにあります。


真摯にモノと向き合い、モノとの対話の中で新たなモノを作り上げていく。メッキと鋳造に創造力が必要だとすれば、おそらくそれはモノとの対話の中でしか生まれようがないのではないでしょうか。そうだとすれば、おそらく企業の技術力を決定付けているのは、職人一人ひとりの現場におけるモノとの対話力の差でしかありません。現場における対話力こそ企業の創造力となり、技術の力となるのでしょう。


つまり、「あっ、このメッキは小西さんのところに相談しよう」「この鋳造は品川さんに頼もう」というお客様の信頼は、結局現場の創造力が源であり、物言わぬモノが十分に信用を勝ち取っているところに、伝統技術を受け継ぐこの2社の存在意義があるのかもしれません。

それゆえに「モノづくりの創造は現場にある」ことを理解しているお二人の経営者(小西社長、品川社長)は、その伝統ある技術を受け継ぎつつさらに新たな創造力を生み出すために、新たな技術開発に取り組んだり、社長自ら作業着で出て職人達と語り合うなど、現場におけるコトづくりを日々実践しておられます。


「伝統は創造である」とは岡本太郎の言葉ですが、「伝統は創造であり、創造は現場にある」ということを改めて今回の工場見学で学ばせていただきました。


▼今回の訪問企業

(株)小西鍍金 http://www.naze.biz/company/14

(株)品川鋳造 http://www.naze.biz/members/shinagawa/


▼参考図書

岡本太郎 『日本の伝統』 光文社<知恵の森文庫>、2005年

2008年10月24日
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